白粗挽きと黒粗挽き
JR成田線の成田駅東口を出て、正面のJR成田駅信号の左角建物の2Fにこの店はある。店内は椅子席が三席、奥がカウンター、さらにその奥が調理場になっている。白粗挽きは蕎麦の実の中心部を、黒粗挽きは挽きぐるみで打ち、使った玄蕎麦は八ヶ岳産につなぎ一割と書かれていた。水切りは良く、多少の切りむらはあるが端切れは目立たない。白粗挽きは味がはっきりしないが黒粗挽きは味と香りはあるが少し薄い。
薬味はねぎとわさびとすだちの輪切りでわさびは良くない。
辛汁は濃厚で辛口。
蕎麦湯は濃厚で蕎麦の味はあるが十分とはいえない。
私はあまり重要視しないが、蕎麦のうまさの一つとしてのど越しを挙げる人がいる。まだ蕎麦の保存方法がなかった江戸時代、夏になると蕎麦が劣化して味が落ち、繋がりが悪くなるので、小麦粉を加えることにより蕎麦の繋がりを良くして、かつ蕎麦を滑らかにした。このことから蕎麦はのど越しと言われるようになったらしい。そして、味の劣化に対しては濃厚なつけ汁を考案して、蕎麦の味ではなく辛汁の味で食べさせたとされている。
すなわち、のど越しとは蕎麦をうまくする方法ではなく、蕎麦を繋げることに付随して発生した歴史を持っている。これがいわゆる二八蕎麦であり、江戸文化といわれるものである。
一方、粗挽きは蕎麦の味、香り、甘味をより引き出すがその半面繋がりは悪くなる。
のど越しと粗挽きは相反する要素であり、蕎麦職人は玄蕎麦を前にして自分の蕎麦の方向性をデザインするのだろう。
若い職人は蕎麦のうまさに主眼を置いていることが多く、この店も後者をより強調しようとしているようだ。
しめこのうさぎさん 2014-09-24